コトびと養成講座レポート

 

6回の講座を通して、参加者は自分や周囲の状況を 人間関係の問題 から 構造の問題 へと視点をシフトさせていきます。この変化は、単なる知識のインプットやスキル練習とは違い、日常にじわじわと影響を及ぼすものです。

問題を“構造”として見立てる第一歩

初回は、多くの方が緊張した面持ちでスタートします。
職業も年齢もさまざまですが「相手に振り回されて疲れてしまう」「関係の距離感がうまくつかめない」など、語られる悩みには共通項が多いのが不思議なところです。

この段階では、まだ多くの参加者が状況を 性格 相性 の問題として捉えています。
しかしコトびとの役割は、話の中に潜む 構造的な要素 を拾い上げ、それが関係性にどう影響しているかを 見える化すること

たとえば「相手が強く出てくると、こちらが全部引き受けてしまう」という出来事は、 相手が強い人だから ではなく、 境界が曖昧な構造が出来上がっている ことによるものだと整理します。

こうして、 ではなく 構造 に注目する第一歩が始まります。

半分で関わる距離感設計

中間地点を探す練習

講座では「半分で関わる」というテーマに沿って対話が繰り返されます。
これは自分の50%を守りつつ相手に関わる方法論です。

しかし、理解したつもりでも、実際にやってみると難しい。
なぜなら、多くの人は 全部やる 全部引く かの両極端に慣れてしまっているからです。

講座ではケーススタディを用いて、支えすぎず、突き放しすぎない中間地点を探す練習を行います。

たとえば「部下の困りごとをすべて引き受けてしまう上司」という設定で対応を考えるワークでは、最初はほぼ全員が 引き受け型 の選択をします。

しかし、見立てとフィードバックを重ねるうちに「それは自分の50%を超えている」という感覚が芽生えます。このように中間地点を体感的に理解することが、 境界原則を実践する基盤 になります。

足るを知る

引くことで広がる余白

第3回の「足るを知る」では、過剰な支援や制度を削ぎ落とし、最小限で最大の自由を生む設計を学びます。この発想は、多くの人にとって逆転の発見です。なぜなら、問題解決のアプローチとして 足す ことばかり考えてしまうからです。

実際、ある参加者は職場の定例会を毎週から隔週に変更しました。
その結果、会議に頼らず自主的なやりとりが増え、負担も軽減されたとのこと。

講座ではこうした実例を共有し「足りない」と感じる瞬間こそ、新しい行動や関係性が生まれるきっかけになることを実感します。

正しく諦める

やめる判断に迷わない構造的視点

第4回「正しく諦める」は、多くの参加者が一番苦戦するテーマです。
やめることは裏切りや投げ出しのように感じられ、つい先延ばしにしてしまいます。しかし、ここで学ぶのは 続けられない構造 を見極める技術です。

ある方は、地域活動で中心的な役割を担っていましたが、人員不足と方向性の不一致で疲弊していました。講座で状況を構造的に整理し、「このまま続けても誰も幸せにならない」と判断。やめた後も後悔はなく、「むしろ次の活動の余力が生まれた」と語ってくれました。やめることは終わりではなく、 新しい構造を設計する始まり だと、多くの受講者がここで腑に落ちます。

人が育つ構造

教えずに育つ環境を描く

第5回では「人が育つ構造」をテーマに、教えない教育の視点を学びます。
ポイントは、 相手を動かそう とするのではなく、 動きたくなる構造 を描くこと。これにより、指示や管理が減り、関係が軽やかになります。

ある受講者は、家庭で子どもに“やらせる”よりも、 やりたくなる環境 を整えたところ、自分から宿題や家事に取り組む姿が見られるようになったと話しました。

この変化は偶然ではなく、構造の変化が行動を引き出した結果です。

持ち帰って活かす

日常の構造設計へ

最終回では、これまでの学びを自分の生活や職場にどう組み込むかを整理します。

受講を終える頃には、多くの人が「関係を変えるために動く」のではなく、「構造を整えることで関係が自然に変わる」感覚を掴んでいます。

養成講座はゴールではなく、 自分の場を見立て、設計し、試す力を持った状態 で次のステージへ進むための基礎固めです。

修了後も、この視点を持ち続けることで、家庭・職場・地域など、どの場でも境界原則を活かせるようになります。

 
 
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