組織やチームでの 境界構造づくり は、個人間の関係とは少し違う難しさがあります。関係の数が増え、役割や責任が重なり、情報が偏る。
さらに、それらが長年の慣習や暗黙の了解で固定化していることも珍しくありません。
この講座では、そうした組織特有の 「境界の崩れ」を見える化 し、 自然に機能する構造を再設計する視点 を身につけます。
ここでお伝えするのは、現場で実際に繰り返し起きている現象と、その背後にある 構造的な理由 です。
初回のテーマは「組織構造の見立て方」。
多くの組織では、日々の出来事や人間関係を 感情や性格の問題 として捉えてしまいがちです。
しかし、現場を観察していると、同じような摩擦やすれ違いが、別の部署や別の時期にも繰り返し現れることがあります。
これは偶然ではなく 構造上の必然 です。
例えば、情報共有の場が 一方向だけに偏っている場合 、受け取る側の判断や行動はどうしても遅れます。
その結果、フォローの手間や確認作業が増え 「あの人は遅い」「やる気がない」 という印象にすり替わってしまうケースも少なくありません。
実際には、性格やモチベーションの問題ではなく、 構造の欠陥が原因 なのです。
第2回は「半分で関わるマネジメント」。
組織の支援やマネジメントでは「やりすぎ」も「放置」も、 どちらも境界を崩す結果 を招きます。多くの現場で見られるのは、メンバーが自走する前に、上司や先輩が先回りして対応してしまうパターンです。
短期的には効率が上がったように見えても、長期的には 依存が強まり 、 自発性が育たない構造 になります。
半分で関わるとは、メンバーが 自分の領域で判断できる余白 を残すことです。これは単なる放任ではなく、必要な支援と責任の境界を明確にし、あえて手を出さない領域をつくる設計です。
境界が整うことで、 支援の負担は減り 、 メンバーは自律的 に動けるようになります。
第3回は「足るを知る制度再設計」です。
制度やルールを見直すとき、この視点を持つことで、必要以上に機能や手順を 増やさない判断 ができます。
多くの組織では「不満が出た」「不具合があった」という理由だけで制度を追加・強化していきます。 短期的には安心感 を得られますが、 長期的には複雑化や硬直化 を招き、現場の動きは重くなります。
足るを知る制度再設計は、まず 現状で何がすでに機能しているか? を明確にし、その機能を損なわず改善案を見出すことを行います。
新しい制度をつくるより、 既存の仕組みの境界を整え直す ことを優先します。
こうすることで、慣れない 制度疲れ や 例外処理の連鎖 を防ぎ、組織は少ないエネルギーで運営することが可能になります。
足るを知る判断が浸透した組織は、 必要な変化にはすばやく対応 し、 不要な変化は拒める強さ を持つようになります。
第4回は「正しく諦める経営判断」です。
正しく諦めるとは、続けることが 構造的に不可能 、または 悪循環しか生まれない と判断できたときに、後悔なく手離せるための判断基準を持つための思想です。
経営判断の現場では、事業やプロジェクトを 「やめる」 ことは避けられがちです。
多くの場合、投じたコストやこれまでの労力への 執着が判断を鈍らせ 、延命策が続くうちに 負担が拡大 していきます。
ここでの「諦める」は投げ出すことではなく、 次に進むための設計行為 として取り組んでいただきます。
無理に握り続けるよりも、早期に手を離すことで組織全体の柔軟性と回復力を保てるのです。
第5回は「人が育つチーム構造」です。
人の成長を阻害するのは能力不足ではなく、多くの場合、 過干渉や境界の曖昧さ であったりします。ここでは境界原則をもとに、成長を妨げずに促す環境条件を整理します。
まず、自他の領域を明確にし、メンバーが 自分の判断で動ける範囲を可視化 します。
次に、答えを先回りして与えず、試行錯誤できる余白を残します。
そして、挑戦と安全のバランスを取る制度や業務配分を整え、 失敗から学べる環境を設計 します。
このようにして構築されたチームは、人に依存せず、構造に支えられて 成長し続ける組織 へと変わります。
最終回は、自分の組織を再設計する演習。
参加者は改善案をプレゼンし、他者からのフィードバックを受けます。
ここで重要なのは、変化を押し付けず、関係者が自然に受け入れられる形で提案すること。
このプロセスは、組織に変化を根付かせる上で不可欠です。
組織特化講座は、 境界原則 を 組織規模 に翻訳し、複数の利害関係者や複雑な制度に対応できる 視野と技術を磨く場 です。
ここで得た力は、修行ステージや法人支援の現場で直結して生かされます。