指示がないと動けない

 
教育や支援の現場で、指示を待つ姿は珍しくありません。
やるべきことが目の前にあっても、自分から動き出さず、具体的な指示を待っている。
一度指示が出れば動くものの、それが途切れればまた手が止まる。
こうした繰り返しは、その場に「動きは指示から始まる」という前提を静かに定着させます。

外から見れば「やる気がない」ようにも映りますが、当事者には理由があります。
言われたことだけをしていれば間違いにならない安心感。
判断して間違える不安。
基準が分からない迷い。
こうした背景が重なると、「言われるまで待つ」ことが安全で確実な行動になります。

関わる側も、動きがなければ機会を逃すため指示を出し、それで動けば一時的に安心します。
しかしその繰り返しが「指示が前提の関係」という構造を強化します。
一見効率的でも、相手の判断の機会を奪い、行動の起点を外部に置き続けるため、自ら動く力は育ちません。

「指示がないと動けない」という現象は、意欲不足ではなく、関係と環境の中で形成された行動の構造の結果です。
構造を変えない限り、回数や強さを増やしても変化は起きません。
 

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